矢車草と祖母のこと

 

日本橋生まれの母方の祖母。

戦時中、まだ小さかった私の母と伯父と共に

祖父の故郷である新潟に疎開していました。

 

母の記憶によれば、祖母は幼い子供の手をひいて

信濃川の川べりにある花農家へ花を買いに行くのを楽しみにしていたとのことです。

戦時中に花を栽培している農家があったことも意外ですが、

そんな時期に花を買うのを楽しみにしていた祖母もなかなか素敵だなと思いました。

 

祖母は母が中学生の頃、病気で亡くなりました。

まだ30代半ば過ぎのことです。

ですから、私は祖母に会ったことがありません。

亡くなる少し前、順天堂病院に入院していた祖母を見舞った母は

こんなことを言われたのだそうです。

「矢車草を植えてね」

それが、庭で花を育てるのが好きだった祖母と交わした最後の言葉だったと

母は話してくれました。

 

一度も会ったことがないけれど、

その話を聞いてからというもの、祖母の心をとてもとても近く感じます。

 

去年の秋、箱根の湿性花園で見つけた矢車草の種を蒔きました。

寒い中ピンクとブルーの花をぽつんぽつんと咲かせます。

暖かくなれば、待ち焦がれたように一斉に咲きだすのでしょう。

 

この花を3月の草花リース体験レッスンに使いたいのに

寒くてなかなか蕾が開いてくれません。

摘んで家の中に入れて3日。

花びらの外側が少しだけ開いてきましたが、

完全に開花するまでにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

 

 

 

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